社労士試験を受けるとなると合計10個の科目を勉強することになりますが、勉強をする科目順も効率良く学習できる順番というのがあります。
こういった試験を受ける方は大体本試験の出題順に勉強をする方が多いですし、実際に講座などを受けてもほぼ本試験の出題順に勉強をしていきますが、これは非効率な順番で勉強をしていることになります。
ここでは、効率の良い科目順とその理由を解説していきますので、勉強に取り組む際の参考にしていただければと思います。
本試験の順番で学習するのは非効率?
上でもお伝えしましたが、試験を受けるとなると思考停止状態で当たり前のように試験に出てくる順番で勉強を始める方がほとんどです。
数多くの受験者が同じような順番で勉強に取り組んでいるので疑うこともないのでしょうが、この順番では非効率です。
まずは本試験(択一式)の科目順を見てみましょう。
- ①労働基準法
- ②労働安全衛生法
- ③労働者災害補償保険法
- ④雇用保険法
- ⑤労働保険の保険料の徴収等に関する法律
- ⑥労務管理その他の労働に関する一般常識
- ⑦社会保険に関する一般常識
- ⑧健康保険法
- ⑨厚生年金法
- ⑩国民年金法
大体の方がこの順番で学習を進めていっていると思いますが、この順番のまま勉強しては非効率な部分があります。
すでに講座を受講したことのある方はお気づきかもしれませんが、だいたいの講座は本試験の順番と国民年金法と厚生年金法が本試験の順番と逆です。
年金制度は“2階建て”と呼ばれており、国民年金が1階、厚生年金が2階と表現されているのですが、これは厚生年金が国民年金の応用でもあるためであり、基礎である国民年金を先に勉強した方が覚えやすいというわけです。
他の科目に関しては初めて社労士の勉強をする方はそのまま順番通りに進めていけばいいかと思いますが、こと8月に入るとこの順番通りでは非効率になってしまいます。
次の項目で8月からの効率良い科目順を解説していきますが、既に社労士の勉強を経験済みの方にも当てはまる順番になりますので、該当する方も一緒にご覧下さい。
8月からの効率的な学習科目順
初期の学習に関しては、本試験の流れに合わせて学習していくのは効率的だとお話しましたが、いつまでもこの順番通りに勉強していては非効率に時間を使ってしまうことになります。
8月、つまり本試験まで1ヶ月を切ったあたりからは今まで学習してきたことの復習に充てるべきで、ここから新たな事を覚えたりすることは控えた方がいいです。
一度学習した範囲を復習し、記憶に定着させるのがこの時期の目的になりますので、これは科目順に勉強するのではなく、最も効果的に振り返りができる順番で進めていきましょう。
8月1日から19日までのスケジュール見本を下記で表にまとめましたのでご覧下さい。
日付 | 科目名 | 学習内容 |
1日 | 労働者災害補償保険法 | 療養補償給付 |
健康保険法 | 療養の給付・保険外併用療養費等 | |
2日 | 労働者災害補償保険法 | 休業補償給付・傷病補償年金 |
健康保険法 | 傷病手当金 | |
3日 | 労働者災害補償保険法 | 葬祭料 |
健康保険法 | 埋葬料・資格喪失後・被扶養者関係 | |
4日 | 労働者災害補償保険法 | 全般 |
健康保険法 | 高額医療費 | |
5日 6日 |
労働者災害補償保険法 | 遺族補償給付 |
厚生年金法 | 遺族厚生年金 | |
国民年金法 | 遺族基礎年金 | |
7日 | 健康保険法 | 出産手当金・出産育児一時金 |
8日 | 予備日 | |
9日 10日 |
労働者災害補償保険法 | 障害補償年金 |
厚生年金法 | 障害厚生年金 | |
国民年金法 | 障害基礎年金 | |
11日 | 労働者災害補償保険法 | 通勤災害・特別支給金 |
労働安全衛生法 | 健康診断以外 | |
12日 | 労働者災害補償保険法 | 二次健康診断給付 |
労働安全衛生法 | 健康診断 | |
13日 14日 |
厚生年金法 | 老齢厚生年金 |
国民年金法 | 老齢基礎年金 | |
15日 | 予備日 | |
16日 | 労働基準法 | 全般 |
一般常識 | 派遣法・男女雇用機会・職安 | |
17日 | 労働基準法 | 全般 |
一般常識 | 高年齢・障害者 | |
18日 | 雇用保険法 | 全般 |
一般常識 | 育児介護・児童手当 | |
19日 | 雇用保険法 | 全般 |
一般常識 | 国民保険・その他 |
この表を見ると、「え!?労働基準法から始めないの!?」となる方がほとんどだと思いますが、労働基準法は後回しで先に労働者災害補償保険法と健康保険法を学習します。
ポイント毎に見ていきましょう。
ポイント1:
類似点が多い労働者災害補償保険と健康保険はまとめて覚える
労働者災害補償保険と健康保険は類似点が多く、比較しながら覚えることもできるのでまとめて学習するのが効率的です。
1日目は治療・療養に関する給付を中心に設定していますが、「ケガをして病院で治療を受ける」という流れは双方同じで、そのケガの原因が業務中や通勤途中で生じたものであれば労働者災害補償保険が適用されますし、業務外であれば健康保険が適用されます。
つまり、治療というサービスを提供する給付という点では同じで原因が異なるだけなので、ここは同じ日に学習しておいた方が頭に入りやすいです。
2日目の傷病手当金と休業補償給付については「ケガで動けなくなったときの所得保障」という大元は同じですが、それぞれ給付の内容が違うので、比較整理しながら覚えるのがベターです。
なお、この辺りの範囲は下記のような表で整理すると理解しやすいと思います。
傷病手当金 | 休業補償給付 | |
待期 | 継続3日 | 通算3日 |
支給額 | 標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額の3分の2 | 給付基礎日額の100分の60 |
支給期間 | 1年6ヶ月 | 制限なし |
3日目の葬祭料と埋葬料も同じ死亡に関する給付で、死亡の原因によってどちらが適用されるのかが変わりますが同じような内容の要件であるため、まとめて覚えてしまいましょう。
このように、労働者災害補償保険法と健康保険法は医療に関する法律ということで類似点も多いので、セットで学習していくといいでしょう。
ポイント2:
年金科目は遺族→障害→老齢の順に学習
5日目と6日目は遺族関係の保険給付をまとめて確認する日に設定しています。
年金科目は遺族の範囲が法律によって違うため多くの受験生が戸惑うポイントになりますし、一生懸命覚えようとしてそれぞれに時間を費やすよりは、表にまとめて頭の中を整理して覚える方が確実に時短になります。
順位 | 遺族 | 生計維持 | その他の要件 |
1 | 子のある配偶者 | ○ | 下記の子と生計同一関係にあること |
子 | ○ | 18歳の年度末又は1,2級障害で20歳未満かつ現に婚姻していないこと |
順位 | 遺族 | 生計維持 | その他の要件 |
1 | 配偶者(妻) | ○ | 特になし |
配偶者(夫) | ○ | 55歳以上(支給開始は60歳から) | |
子 | ○ | 18歳の年度末又は1,2級障害で20歳未満かつ現に婚姻していないこと | |
2 | 父母 | ○ | 55歳以上(支給開始は60歳から) |
3 | 孫 | ○ | 18歳の年度末又は1,2級障害で20歳未満かつ現に婚姻していないこと |
4 | 祖父母 | ○ | 55歳以上(支給開始は60歳から) |
順位 | 遺族 | 生計維持 | その他の要件 |
1 | 配偶者(妻) | ○ | 特になし |
配偶者(夫) | ○ | 60歳以上で障害状態にある※ | |
2 | 子 | ○ | 18歳の年度末までにあり障害状態にある |
3 | 父母 | ○ | 60歳以上で障害状態にある |
4 | 孫 | ○ | 18歳の年度末までにあり障害状態にある |
5 | 祖父母 | ○ | 60歳以上で障害状態にある |
6 | 兄弟姉妹 | ○ | 18歳の年度末まで又は60歳以上で障害状態にある |
7 | 夫 | ○ | 55歳以上60歳未満で障害状態にない |
8 | 父母 | ○ | |
9 | 祖父母 | ○ | |
10 | 兄弟姉妹 | ○ |
※障害状態にあるとは、厚生労働省令で定める障害等級5級以上の状態にあることを指します。
ひとつひとつの法律の要項を個別に覚えるよりも、こうして表にまとめて視覚化した方が頭に入りやすいですよね。
また、年金科目の学習順は遺族→障害→老齢の順にしていくのが効果的です。
本試験が差し迫ってきているこの時期にいかに得点力をアップさせるかという事を優先して考えたときに、確実に得点源にできるのが遺族と障害であるため、この2つを先に学習するのが得策と言えます。
年金科目では老齢厚生年金は非常に難しい部類に入るにも関わらず、択一式で出題されるのは多くても2問です。
その2問のために理解に時間も掛かる老齢をガッツリ勉強するのは効率的ではなく、問題数も多く出題ポイントもある程度絞り込める遺族や障害にウエイトを置いた方がいいのはお分かりいただけるでしょう。
ポイント3:
労働基準法・雇用保険法は一般常識と併せて学習
本試験の科目順でいえばトップバッターの労働基準法が後半に入ってからようやく登場です。
労働基準法の学習も、一般常識の労働者派遣法、男女雇用機会均等法などと通ずる点があるため、まとめて学習しましょう。
仕上げの雇用保険法は独特の法律ですが、一般の育児介護や児童手当などと組み合わせて学習しましょう。
社労士の試験対策を効率よく行うための科目順まとめ
上でスケジュールの例を挙げましたが、もちろんこれが正解というわけではありません。
ご自身でもっと効率的な方法を見つけているのであればそれを上手に組み込んでいただければ、より効率が上がるでしょう。
しかし、本文中でご説明した通り、同じような内容の項目は表で整理するなどして覚えた方が効率的であるのは間違いありません。
同じような科目でひとつずつ復習するとそれだけ時間が掛かってしまいますからね。
また、スケジュール例で予備日を設けているのは何らかの事情でスケジュールがこなせなかった場合の予備的な扱いです。
スケジュールは立てたがその通りにいかないと、一気にやる気がなくなってしまう方も多いので、保険の意味でもこういったスケジュールの組み方をした方がいいですね。
スケジュール通りこなせているのであれば、その日は苦手科目に充てればより得点アップが望めるでしょう。